IMF経済危機と韓国経済 アジア太平洋学科 許栄振 韓国の学生ならば、誰しも学校の授業で韓国の高度経済成長を現す「漢江の奇跡」という言葉を習ったことがあるだろう。しかし、その成長に至るまでの過程、メカニズムなどを問われた時、すぐに答えられる人は多くない。私もその一人で、母国についてあまりにも無知であったことに恥を感じ、またそれが今回の卒業論文のテーマを決めるきっかけとなった。なお、指導教授である文先生が、韓国経済に詳しいということも、このテーマを卒業論文にした理由の一つである。 韓国経済は、35年間の日本による植民地と、1950年に始まった朝鮮戦争で荒廃化した状態でスタートした。植民地時代から南の韓国には農業が主な産業であり、工業は北朝鮮を中心に発展されてきた。過剰な人口と未熟な経済基盤という悪条件の中、アメリカの援助を踏み台にし、韓国経済の土台作りが始まった。この過程で政府に近いいくつかの企業が財閥として形成され、後に韓国経済の牽引車となる。その後、韓国経済は政府の主導によって輸出志向政策、重化学工業化政策が実施され、目覚しい発展を見せた。開発のため必要な外貨は政府の積極的な外資誘致政策で導入され、輸出向けの企業を中心に提供された。 1988年にはソウルオリンピック開催とIMF8条国入り、また1996年には日本に次いでアジア2番目のOECD加盟国となった。着実な輸出の伸びと、世界12位という経済規模を誇るまで成長を見せた韓国経済だが、1997年アジア通貨危機の余波は韓国まで及んだ。そして同年の12月、韓国はIMFに救済金融を要請することになった。 その後、韓国はあらゆる部門で改革が行われ、1998年には大幅なマイナス成長を記録したものの、1999年からはプラス成長に転じ、1999年9月に高金利であった補充準備金を返済した。また、2001年8月には借入総額を返済し、韓国経済は回復した。 本論文は韓国経済の発展過程、経済危機、そして構造改革という流れで構成されている。1、2章では輸出志向政策と重化学工業化政策を中心に韓国経済発展の過程を、そして韓国経済成長の牽引車である財閥について分析した。3章では、韓国がなぜ経済危機に陥ったのか、その原因と危機に陥った韓国経済の実像を見ていく。そして4章においては、金融・企業・労働・公共部門に対してどのような改革が行われたのか、その内容と特徴を見る。最後の5章はまとめとなっている。 目次 第1章 解放後の韓国経済 1.朝鮮戦争と南農北工の経済構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2.アメリカの援助と三白産業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3.漢江の奇跡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3-1.輸入代替工業化と輸出指向工業化政策 3-2.重化学工業化 4.外貨依存経済 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第2章 韓国経済における財閥 1.財閥の形成背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2.財閥の構造と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第3章 IMF経済危機と韓国経済 1.IMF経済危機の原因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2.経済危機に陥った韓国経済の実像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2-1.利益を生まない輸出と銀行の経営悪化 2-2.韓国企業の経営悪化 2-3.財閥の連続倒産 第4章 韓国の構造改革 1.金融市場改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2.企業構造改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 3.労働市場改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 4.公共部門改革 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 第5章 まとめ |